点の記
境界と筆界について思うこと

境界と筆界について思うこと

    土地家屋調査士の参考書をぱらぱら見ていると「筆界」という言葉が出てきます。土地家屋調査士であることを実感させてくれる言葉です。「ひっかい」と読んだり「ふでかい」と読んだりします。なんとなく聞いたことあるような感じのする言葉です。似たような言葉に「境界」があります。ややこしいことに「境界」と「筆界」は違う概念なのです。「筆界」は「筆界」、「境界」は「境界」なのです。

筆界ってなに?

不動産登記法第123条一 筆界 表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境界を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。

これが「筆界」の法律上の定義です。

これに対し「境界」というのは、いわゆる所有権界です。つまり「この塀の東側からが私の敷地」とか言う場合の土地の境目です。関係者が話し合って合意の上、取り決めて決定することができます。日本は民主主義国家ですから、所有権が認められていて、所有物の処分は原則自由ですから、境界も自由に取り決められるわけです。
でも「筆界」は違います。上の定義には、個人の意思というものは入っていません。ただ「登記された時にその境界を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線」と書かれています。これって何でしょうか?ちょっと考えたいと思います。

1番という土地を取引する時に、今の所有者は、どこを指して1番の土地と呼んでいるのだろうか?

土地の場合、今の所有者が土地を埋め立てて新たに土地を造ったり、海底が隆起して新しく土地ができたりしない限り、誰かから譲渡された土地ということになります。従って、譲渡されたのだから、1番の土地が指していた範囲がもともとあったはずで、その範囲の土地を譲渡したのだと言えます。こうやって土地は所有権を転々としながら存在しつづけたと考えると、所有権が指す土地の内容というものも一緒に存在していたと考える他ありません。所有権はあるが所有権の対象とする土地の範囲はわからない、というのでは何を所有しているのか明確でないから所有権と矛盾するからです。
そうすると、不動産登記法第123条にある「登記された時に…直線」というのは、所有権を説明する前提としての土地の範囲を仮定したものと考えることができます。「最初に範囲が決まっていなかったら、そもそも所有権移転ということが起こりえない。しかし、1番の土地はこれまで所有権移転を何度かなされてきた。ということは、最初に範囲があったからに他ならない。その最初の範囲を構成する点や直線を筆界と言おう。」ということになると思います。

筆界はどこに存在するのか?

これがまた悩ましい問題です。なぜなら「登記された時にその境界を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線」と言っても、そのことを具体的に示す図面というのは、地租改正の時に作られた土地台帳附属地図だからです。明治時代の地図とはいえ、なかなか正確に書かれていたりして、興味深い地図ですが、現地で再現するには誤差もあり、そう簡単に「筆界」を特定できません。でも「筆界」は確かにあるのです(無いと矛盾してしまう)。
このあたり伝えづらいのですが、例えば、市の境や県の境のようなものを想像していただくといいかも知れません。市の境や、県の境は、ありますよね。でも現地でどこか視覚的にわかりますか?そこに家が建っていたらその境はどうなりますか?
こうやって考えると、市の境や県の境というのは、現況の地物や土地の所有者が主張する「境界」とは無関係に存在するものだと気がつきます。これはある意味、概念的な境なのです。私は「筆界」というものも、そういうものだと考えています。

実は日本は「筆界」と呼ばれる見えない線で区切られている!ということになります。

この「筆界」が問題になるのは、土地の界を正確に登記に反映させようという時です。「境界」を決めても、「筆界」は動きません。「筆界」を変更して、「境界」と「筆界」を一致させるには、分合筆しないと変更できませんが、その前提として「筆界」の位置を特定しなければならないからです。
この「筆界」ですが、筆界特定制度という便利な制度があります。また裁判であれば、筆界を決めることができます。

何を言っているのか、わからなくなってきました…。詳しくは、土地家屋調査士にお尋ねください!